
飲食店経営にとって不可欠なのは、外食産業を取り巻く環境の正確な把握です。本章では、公的団体の最新データを根拠として、現状と今後の方向性を俯瞰します。
外食産業の回復と現在地
- 日本フードサービス協会(JF)の年間結果によると、2024年の外食売上は前年比108.4%。価格改定による客単価上昇(103.9%)が寄与し、インバウンド増もプラス要因でした(公式PDF:令和6年(2024年)年間結果報告)。
- 同協会の前年レポートでは、2023年の売上は前年比114.1%、2019年比107.7%と回復。一方、客数は2019年比90.9%にとどまり、客単価の上昇が売上を押し上げた構図が示されました(公式PDF:令和5年(2023年)年間結果報告)。
市場規模(外食・広義の外食)
- JFと食の安全・安心財団の共同推計では、2023年の外食産業市場規模は24兆1,512億円、広義の外食(外食+料理品小売:中食の一部)は31兆7,828億円と推計されています(公式資料:令和4・5年 外食産業市場規模推計について)。
- 関連データの入口(最新PDF / Excel へのリンクあり):JF「データからみる外食産業」
内食・中食・外食の構造変化
日本の食生活は、1960年代は内食中心、1970年代から外食が拡大、1980年代末以降は中食が大きく伸長してきました。背景と定義の整理は以下の解説が分かりやすいです:
いま押さえるべき追い風と逆風
追い風
- 訪日客の増加と外食需要の回復(参考:2024年 年間結果報告)
- モバイルオーダーやキャッシュレス等、業務効率化テクノロジーの普及
- 高付加価値・健康志向メニューへの関心の高まり
逆風
- 食材・エネルギーコストの上昇、人手不足
- 客数の完全回復遅れ(2023年 年間結果報告で2019年比90.9%)
- 内食・中食とのチャネル競合の激化
これからのトレンドと示唆
- 販売チャネルの融合:店内・テイクアウト・デリバリーを前提に設計
- 体験価値・コンセプト重視:SNS映え・テーマ性・ライブ調理・地域連携
- サステナブル経営:食品ロス削減、地産地消、環境配慮の見える化
- データ活用:POS・予約・会員データを統合し、LTV最大化
まとめ
外食市場は「客単価主導の回復」が進み、業態差も残ります。内食・中食の伸長は脅威であると同時に、テイクアウトや惣菜の活用など自店の収益機会にもなり得ます。
そのため今こそ、データを踏まえた経営戦略を土台に、経営基盤の強化・再構築を図ることが重要です。