
飲食店の経営は感覚だけでは安定しません。数字を活用して現状を把握し、改善策を導き出すことが、持続的な利益向上につながります。中小企業白書や日本フードサービス協会の統計でも、数字管理の有無が経営安定度に大きく影響することが示されています。本記事では、飲食店が最低限押さえておくべき経営指標と、それを改善に結びつける方法を解説します。
目次
1. 経営に必要な数字とは
飲食店経営で把握すべき代表的な数字は以下の通りです。
- 売上高(全体・時間帯別・商品別)
- 原価率(売上に対する食材費の割合)
- 人件費率(売上に対する人件費の割合)
- FL比率(Food+Laborの合計が売上に占める割合)
- 固定費(家賃、光熱費、通信費など)
- 営業利益
特にFL比率は業界共通の重要指標で、中小企業庁の指標によれば、一般的な飲食店では55〜60%が目安とされています。
2. 数字を活用するための基本ステップ
- 売上・経費データを日次・月次で集計する
- 主要指標を計算する(原価率、人件費率、FL比率など)
- 過去データや業界平均と比較する
- 差異の原因を特定する
- 改善策を立案・実行し、再度数値で検証する
このPDCAサイクルを回すことで、改善が継続的に行えます。
3. 改善事例:原価率の最適化
ある個人経営のレストランでは、原価率が40%を超えており利益が圧迫されていました。経済産業省 商業動態統計の飲食業平均値(約30%)と比較して高い状態です。原因は一部の人気メニューの原価が高すぎたことと、仕入れ先の価格変動への対応が遅れたことでした。
そこで、仕入れ価格の見直し、ポーション調整、低原価メニューの販促強化を行った結果、3カ月で原価率を35%にまで改善しました。
4. 人件費率改善の取り組み
人件費率が高くなる原因は、スタッフのシフト管理やピーク時以外の人員配置に問題がある場合が多いです。日本フードサービス協会のデータでは、人件費率は売上の25〜30%が一般的です。これを超える場合は、稼働率とシフトの再設計を行う必要があります。
また、業務効率化のためにキッチンオペレーションを見直すことで、人員数を減らさずに労働生産性を向上させることも可能です。
5. 数字と現場の感覚を融合する
経営数字は客観的な事実を示しますが、現場での顧客反応やスタッフの働きやすさといった定性的な情報も無視できません。数字だけを追いすぎると、短期的なコスト削減が長期的な顧客離れにつながる危険性もあります。
例えば、客単価が下がった原因が値下げによるものであれば、再度価格戦略を見直す必要がありますし、メニュー改定や販促施策と組み合わせることが有効です。
まとめ
経営数字は単なる記録ではなく、改善のための羅針盤です。売上・原価率・人件費率といった基本指標を継続的に把握し、業界平均や過去データと比較することで、具体的な改善策を導き出せます。次回は、こうした数字を踏まえて「メニュー戦略で利益率を上げる方法」を解説します。
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