
飲食店経営において成功するためには、まず「戦う市場を知る」ことが不可欠です。外食産業は時代や社会の変化、消費者ニーズの移り変わりに敏感に反応する業界です。景気や流行、人口構造、さらには天候までが売上に影響を及ぼします。本記事では、外食産業の現状を把握し、自店の立ち位置を明確にする方法について、信頼できる統計データや調査結果を交えて解説します。
目次
1. 外食産業の現状を知る重要性
市場の動きを知らずに経営を続けることは、羅針盤を持たずに航海に出るようなものです。外食産業はコロナ禍を経て、大きく構造が変わりました。日本フードサービス協会の統計によれば、2020年以降デリバリーやテイクアウト需要が急増し、業態別売上構成にも大きな変化が見られます。
また、総務省統計局の家計調査でも、外食支出の中で持ち帰り・宅配の割合が増加していることが確認されています。こうした市場変化を踏まえ、自店の強みや弱みを明確化することで、戦略の方向性が見えてきます。
2. 市場分析の方法
外食産業の現状を知るには、以下の情報源が役立ちます。
- 日本フードサービス協会の月次・年次統計
- 総務省統計局 家計調査データ
- 経済産業省 商業動態統計
- 地域商工会議所の調査資料
- 競合店舗の現地観察とメニュー価格調査
これらを継続的にチェックすることで、市場の動きを数値的に把握できます。
3. 自店の立ち位置を確認する
市場全体を理解した上で、次に行うべきは「自店の立ち位置」を明確化することです。具体的には、以下の観点で現状を整理します。
- 客層(年齢層、性別、来店目的)
- 提供価格帯(低価格帯、中価格帯、高価格帯)
- 主要メニューとその差別化要因
- 立地条件とアクセス性
- 売上構成(曜日別、時間帯別、商品別)
この分析はSWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)に落とし込むと整理しやすくなります。
4. 競合比較で見えてくる差別化の方向性
自店の立ち位置をより明確にするために、競合店舗との比較は欠かせません。競合の強み・弱みを知ることで、自店がどこで勝てるのか、どこを改善すべきかが見えてきます。
- 価格帯が同じでも料理の提供スピードはどうか
- 雰囲気や接客レベルはどうか
- メニュー構成の幅や独自性はあるか
差別化ポイントは必ずしも大規模なものである必要はなく、小さな改善の積み重ねが顧客満足度向上に直結します。
5. データと感覚の両輪で判断する
外食産業の現状を把握する際、統計データだけでは見えない部分も多くあります。実際の店舗でのお客様の反応、スタッフからのフィードバックなど、「現場感覚」も大切な情報源です。観光庁の観光統計なども併せて参照すると、訪日客需要など外部要因も加味できます。
データと感覚の両輪で判断することで、机上の空論に陥らず、現実的な戦略が立てられます。
まとめ
外食産業の現状を知ることは、自店の戦略設計の出発点です。市場を分析し、自店の立ち位置を把握することで、差別化戦略の方向性が明確になります。次回は、この分析をもとに経営数字を活用して改善につなげる方法を解説します。
次回予告
次回は「経営数字を活用した改善手法」について解説します。数字を見える化し、改善に直結させる具体策をご紹介します。